カスタマー平均評価: 4.5
ある華族の昭和史 彼女をはじめて知ったのはテレビで、某宮様のご婚礼のコメントをしていた時だった。日本にもこのようなマダムと呼べる人がいたか、と感心させられたが、それよりも冷たいまでの気高い風貌とは異なって、そのお相手のお嬢様にとても暖かいコメントをされていたのが印象的だった。マダムなどと申し上げるのも世が世なら相当失礼なことで、彼女は加賀百万石の前田のお姫様だったのである。通りで高貴な印象を与えるはずである。そしてまたその暖かいと感じたコメントも本書を読めばわかるはずで、戦争という時代が彼女をただのお姫様でなく相当な苦労や困難を通り抜けてきた一人の女性としての重みある発言だったのだ。この「ある華族の昭和史」は私達の知りえない旧華族の日常やその中でのヒエラルキー、恋愛哲学、マナーが記されていてとても興味深い一冊だった。少々自画自賛的ではあるが、それもお姫様なのだから、と目をつぶってしまえば、今の私達にも充分使えるテクニックとテクニックを越えたもっと深い生き方がちりばめてあると思う。自伝的小説であって、仮名なのか?実在していない人物なのか?と思わせる人物も主要な人間関係の中に出てくるが、??を忘れさせる著者の文章力にとうとう夜中まで付き合わされてしまったわけである。。 中でも最後の章に登場した三島由紀夫氏との付き合い(男女関係というわけでなく)は、個人的にとても興味深いところだった。。常々氏の「肉体の学校」のヒロインは酒井美意子女史がモデルではないかと思っていたので、自分の中で想像が確信に近いものとなった。。 今では旧華族という言葉もまわりには存在しないのだが、華族という制度の功罪はともかくとして、彼女のような本当の品性のあるしかもウィットに富んだ女性がこの著書だけでなく数々の著作を我々に残してくれたのは本当にありがたいことだと思う。親子の関係が歪んでしまっていたり、ゆとりがない時代に改めて紐解いてほしい一冊だと思う やっと読めました 古本マーケットを探しまくってやっと入手しました。 上記のニューヨーク在中の方の書いておられるとうりです。 是非再販して欲しい一冊です。 激動の昭和を華麗に、壮絶に力強い文章で描写 歴史で戦前の、昭和初期の日本をほとんど習うことなく今を生きる私たちには必読。 かつて存在した日本の貴族階級とそれをとりまく上流階級、大戦争に抗えず突入していく乱世、当時の軍部の様子を素晴らしい文章力であらわす。かつて存在した上流社会、貴族階級とはどういう歴史を経た、どういう人たちで、どのような生活をしていたのか。東条英機は、松岡洋右は、陸軍は、海軍は、どういう人達だったのか、前田家のお姫様として、戦争末期には外務省職員として、一般庶民とは違う舞台で激動の昭和をつぶさに見てきた筆者の自伝。 かつての日本に存在した質実剛健、華麗で上品な社会に、同じ国とは思えないほどの衝撃と新鮮さを感じる。小説としても、史料としても、面白く、読み出したら一気に最後まで引き込まれる。抑制とユーモアの聞いた豊かな表現力に知性と品格とを感じさせる文章。 筆者の豊かな才能と、非凡な人生とが生み出した卓越した本。一人でも多くの人によんでもらいたい。どこの書店にいっても絶版といわれ、置いていない(大叔母にもらった古本を私は読みました)ので、皆さん、たくさん注文して再版してもらいましょう!
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