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宮部みゆき

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名もなき毒 (カッパ・ノベルス) 英雄の書 上 火車 (新潮文庫) 英雄の書 下 日暮らし〈上〉 (講談社文庫) 理由 (新潮文庫) 模倣犯1 (新潮文庫) 楽園〈上〉 おそろし 三島屋変調百物語事始 孤宿の人 (上) (新人物ノベルス)
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名もなき毒 (カッパ・ノベルス)

[ 新書 ]
名もなき毒 (カッパ・ノベルス)

・宮部みゆき
【光文社】
発売日: 2009-05-21
参考価格: 1,260 円(税込)
販売価格: 1,260 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 541円〜
名もなき毒 (カッパ・ノベルス)
宮部みゆき
カスタマー平均評価:  4.5
人間社会が生み出す「毒」
人間社会或いは人間関係が生み出している「毒」。 それは、格差社会から生まれるものかも知れないし、もっと別の社会システムから生み出されるものかも知れません。 そうした「毒」に侵されて、社会の中に溶け込めない人たちが増えているのかも知れません。 毎日の新聞を読んでいると、ふとそんな気がしてきます。 もともとがそんな「毒」が元で引き起こされた事件だけに、何のトリックもありません。 従って、所謂「推理小説」の面白さを求めてはいけません。 むしろ、社会問題を扱った「一般小説」或いはせいぜい「犯罪小説」と言うところでしょう。 でも、ストーリー・テラーである作者の力を遺憾なく発揮して、読ませる小説になっています。 結構長い小説なのですが、ノン・ストップで読みたくなる小説です。
私は正月より年末が好きだった
久々に宮部ワールドに引き込まれました。作品の中盤,遅々として進まない平坦な流れ…登場人物によって語られる(緻密な取材に基づく)社会問題の解説。先を知りたい読者にとっては少々つらい一時。しかし,こここそじっくりと読まなくてはいけません。そして突然の展開。「えっ! えええっ!」。これがたまりません。宮部さんの作品は単なる推理小説ではありませんよね。犯人が誰?,トリックが何?,なんて読者は期待していません(?)。宮部さんが尊敬する「松本清張」氏の作品に少しずつ近づいているのではありませんか?
深い・・・・
夕方購入し、一気に読んでしまいました。物語自体の展開は途中から少し間延びした感じがありましたが、本書が取り上げている人間の「毒」というテーマが読後胸に迫ってきます。 僕の中にある「毒」はなんなのか?と、深遠な気持ちになりました。 ミステリーとしての完成度が最高とは思いませんでしたが、人によっては自分の内面と向き合う機会を持てる、良い本だと思います。

英雄の書 上

[ 単行本 ]
英雄の書 上

・宮部 みゆき
【毎日新聞社】
発売日: 2009-02-14
参考価格: 1,680 円(税込)
販売価格: 1,680 円(税込)
 Amazonポイント: 16 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 765円〜
英雄の書 上 ※一部大型商品を除く
宮部 みゆき
カスタマー平均評価:  3.5
素敵な宮部作品
久々に読んだ宮部作品。 レビューはあまり良くないようですが、面白かったです。 最近、他の著者による、子供が主人公のミステリーを読みまして…。 そちらの読後感が重かったのに比べ、爽やかな気持ちで読み終わることができました。 きっかけとなった事件が重すぎることや、 子供が読むには難しい概念がベースになっていることなど 満点ではないのですが…。 人間の何を描くのか。  残酷か、悲哀か。前進しようとする気持ちか、停滞か。 宮部さんの物語は、そこに込めるメッセージにいつも励まされるものを感じます。 子供の主人公+動物の従者(訳ありの)というのも 個人的に好きなパターンで、楽しく読めました。
作者はファンタジーには向いていませんね
完全に『ブレイブ・ストーリー』の作品構成と一緒、読む気がある方は文庫待ちした方が、懸命です。
序盤は我慢…
ファンタジーが好きで購入しました。表紙のイメージでダークな感じを受けたのですが 私の好みの冒険もので 楽しめました。 器 輪 領域 という定義を理解できるのに少し時間がかかりますが 読み進めていく内に いつのまにか理解できています! 理解させるために 序章的な内容がかなり長くなっている気はしますが… それでも 続きが気になり一気読みしてしまうような魅力! 続編がありそうな終わり方なので 期待ですね!
ロードオブザリング?
 宮部みゆきは「私の好きな作家ベスト10」からはずれたことのない作家です。今まで彼女の作品を途中で投げ出したことはなかったのですが、これがその初めての本となりました。  「ロード・オブ・ザ・リング」と「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を足して2で割ってぬるま湯で10倍くらいに薄めた感じです。残念っ!
感情移入しづらい冒険小説
宮部みゆきの新作。著者の作品は必ず読んでいますが、著者の構築する 世界観の緻密さには、いつも感心させられます。 主人公は小5の少女、兄を助ける為に冒険に旅立ちます。ストーリーが どんどん展開し、楽しく読み進んでいけるエンターテイメント小説と なっています。イメージがどんどん広がる細かな記述もあいかわらず。 加えて、本著では、著者が愛する”物語”に対する敬意、愛情が心地 良いです。 但し、主人公にはなんとなく感情移入ができず。自分とは年が離れ過ぎ ているからか(『ICO』や『ブレイブ・ストーリー』は大丈夫だったのに)、 あまりに主人公が理性的だからか。。。 個人差があるとは思いますが、僕としては、ちょっとだけ消化不良な 感触が残るファンタジーです。

火車 (新潮文庫)

[ 文庫 ]
火車 (新潮文庫)

・宮部 みゆき
【新潮社】
発売日: 1998-01
参考価格: 900 円(税込)
販売価格: 900 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
火車 (新潮文庫)
宮部 みゆき
カスタマー平均評価:  4.5
平成の幕開けとともに生まれた傑作
このたび私は、リストマニア機能を使い、 「日本ミステリ【マイ・ベスト・テン】」を掲載した。 そこに挙げた作品の中で、 真っ先に再読したくなったのが、 本書「火車」である。 本書は、カード破産をいち早く取り上げた作品として、 1992年の発表当時、話題になった作品であり、 著者がその後直木賞作家となっていく 礎を築いた作品であるとともに、 現在も多くの読者に読まれている人気作である。 ミステリの楽しみ方として、 密室殺人や孤島ものなど、 現実から遊離した世界を楽しむのも一興であるが、 その時代の矛盾や暗部を ミステリの手法を使ってあぶり出していく、 いわゆる社会派の存在も見逃すことはできない。 本書はそうした 「社会派」の傑作と呼ぶにふさわしい作品だ。 ベストテンのひとつに、 私は松本清張の「ゼロの焦点」を掲げたが、 この作品が昭和を代表する 社会派ミステリであるとするなら、 本書は、平成の幕開けとともに生まれた 社会派ミステリの傑作である。 この両作品、扱っている題材は違うが、 物語の発端が「失踪事件」であるのは興味深い。 「ゼロの焦点」では新婚カップルの夫の失踪、 「火車」では婚約カップルの女性の失踪が 冒頭に起こり、物語が展開していく。 愛する人との新生活を控え、 希望に満ちていたはずなのに、 その生活を捨ててしまわなければならないほどの理由とは何か、 そんな魅力的な謎を追っていく物語なのである。 本書「火車」のテーマ「カード社会」について、 ひとつ感じることがある。 私事で恐縮であるが、 本書を初めて読んだ1992年当時、 カードといえば銀行の キャッシュカードを1枚持っているのみであったが、 その後、複数のクレジットカードを取得し、 現在に至っているのである。 カード社会は作品発表時より、 さらに浸透しているのではないかというのが、 実感であり、それゆえ本書は、 発表後17年を経てもなお、 輝きを失っていないと思う。 本書は、カード社会の矛盾を分かりやすく、 ミステリの手法を借りて描ききった作品として、 これから読まれる方の心にも 必ずや深い余韻を残す作品となるであろう。
内容は興味深いが…
終始テンションが上がる場面を見つけられないまま読み終わってしまった感じです。
ミステリーの最高峰
ストーリーは,休職中の刑事に,失踪した婚約者の捜索を親戚が依頼するところから始まる.この失踪の謎を解くカギは,クレジットカードによる自己破産であった. 自己破産は,バブル時代に一時期社会問題化していたが,破産当事者やその家族がどんなに惨めな生活を送らなければならないかは,あまり多くを語られてこなかった.著者はその点に着目し,自己破産者に一筋の光明を与えている. ミステリーの仕掛けは,非常に巧妙で,ページを繰る手が止まらないぐらいに入り込んだ.本書は山本周五郎賞を獲得した作品にふさわしく,さすが宮部みゆきと唸らせる作品となっている.宮部ファンでなくても,一読の価値があると思われる.
合わなかった
本嫌いでしたが最近、東野圭吾の作品で本にハマった者です。今回読んだ宮部みゆきさんの火車は、無駄に長く、テンポがなく感じました。話がそれるのはいいんですが、逸れ方が楽しめない。比喩のセンスもあまり好みではありませんでした。『そば屋のレジでフランス料理のフルコース並みの代金を請求されたような顔』何度も読み続けようとしましたが、途中で本を閉じてしまいました。過去20年間で第一位の作品らしいので、すごい作品なんでしょうけど。
ん?
なんでこの作品が絶賛されてるかよく分からなかったというよりは、この作家があまり好きじゃないんだと思った。宮部みゆき原作の映画を今まで二作品見たことはあったが、初めて本を読んだ。やっぱり合わなかった。ごく稀に表現・描写に不快感を覚える。痛々しい感じで読めない分けではない。でもそのことが続きを読む気を抑え、萎えさせる。だがこの本が絶賛されているということは社会一般には受け入れられる表現・描写なんだと思う。ただ読書は趣味だ、絶対的評価ではない社会的評価がどうであろうとも自分の評価は2だ。

英雄の書 下

[ 単行本 ]
英雄の書 下

・宮部 みゆき
【毎日新聞社】
発売日: 2009-02-14
参考価格: 1,680 円(税込)
販売価格: 1,680 円(税込)
 Amazonポイント: 16 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 694円〜
英雄の書 下 ※一部大型商品を除く
宮部 みゆき
カスタマー平均評価:  2.5
挫折
 宮部さんの作品は全部読んでいますが、初めて途中で挫折しました。読み続けられませんでした。  もっとスケールが大きくなるのかと期待しつつ読み進めても、そうでもない。アッシュの国の歴史は説明口調で、主人公が体験するわけでもなく、斜め読みで飛ばしました。城が壊れて地下へ、というところで挫折。  こんなはずではなかったのでは?  これは不満が残ります。  
最後までイライラ
上巻のレビューが皆さんベタ褒めだったので買ったのですが、正直この本は読んでて辛かった。 主人公のユリコの成長物語と言いながら、最初から最後まで、すぐ癇癪起こすわ、泣くは、グズるはとその言動にイライラしっぱなし。そのくせ、都合の良い時だけ異様に理解力が良くなり、妙に大人な対応をしたりする。 残念ながら、私には不快感ばかりが残る読書となりました。
ファンタジーになっていない
はっきり言って内容は、ファンタジーになっていませんね。只、闇雲に主人公の葛藤を文字にしているだけで、物語になっていないです。『辻村深月』の作品の様なダラダラと、面倒臭い強引な内容でした。『ICO』『ブレイブ・ストーリー』『ドリーム・バスター』と読んできましたが、宮部女史はファンタジーには向いていませんね、やはりミステリを書くべきですね。続編が無い事を鑑みると、『ドリーム・バスター』も行き詰まったのでしょう。現在では、無理矢理ライトノベルにジャンル付けされてしまっていますが、十数年前からファンタジーをかかれている幻想小説家さん達を、見習う巾ですね。
期待していただけに…
主人公・ユーリが小学生というのは、どうにも無理過ぎました。 オルキャストは、子供でなくてはならない。 兄が中学生だから、彼女は小学生にしなくてはならなかったとしても、やっぱり小学生じゃないですよね…。 作品の序章が長すぎて、なかなか物語に入っていけない。 世界観を描くためにページを使い過ぎたのでは…? 新聞の連載だったせいか、全体の配分が悪かったように感じます。 最初にページを割き過ぎた割に、尻つぼみに終わってしまったような…。 ブレイブ・ストーリーでも感じたのですが、物語の山の一つでもある戦闘シーンの描写が宮部さんは、あまりお上手じゃないかも…。 兄を追いやった中学生たちや、先生達に対する憤りは伝わるのですが、結局、犯してしまった罪が重すぎて救いがなかった。 ご自身が紡ぐ人である宮部さん、ファンは期待しております。 期待していただけに、ちょっと中途半端でザンネンでした。
物語としては出来上がりであるが・・・
 物語としては出来上がったようですが、ハッピーエンドではないので、読み終えた今はかなり複雑な気持ちです。展開がすばやく進む部分もあるので、もう少し膨らませて3冊くらいにした方が、個人的には良かったです、ハッピーエンドを含めて。  宮部氏の著作のラストシーンはこんなパターンが多いような気がします。後味の悪い方が印象に残るということなのでしょうか?

日暮らし〈上〉 (講談社文庫)

[ 文庫 ]
日暮らし〈上〉 (講談社文庫)

・宮部 みゆき
【講談社】
発売日: 2008-11-14
参考価格: 580 円(税込)
販売価格: 580 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
日暮らし〈上〉 (講談社文庫)
宮部 みゆき
カスタマー平均評価:  4
おもしろかったです??
 『ぼんくら』を読んだ後、すぐに『日暮らし』を読みました。私はやっぱり宮部みゆきさんの時代物は、読んだあと心がホカホカします。弓之助は相変わらず可愛いし。  でも『ぼんくら』のほうがもっと面白かったかな?って思います。なんだか、『ぼんくら』を読んで登場人物に惚れ込んでしまったので、なじみの人たちがあまり多く登場しなかったのが少し残念でした。おでこちゃんとかもっと出てほしかったー!    やっぱり湊屋は意味分かりません。佐吉に葵のことを最後まで隠し通せずにポロリとしゃべっちゃうし!佐吉が可哀相でしょうがないです。でもお恵さんと幸せになれて本当によかったです★  また続きがでてほしいなあと思います。
宮部みゆきのコミケ出品作品ですか?
最近の宮部みゆきさんの本は、なんだか気の抜けたような作品が多いのですが、この作品はひどかったです。 前作である「ぼんくら」を読んでないということもあるのですが、作品はひとつひとつ独立したものだと考えて、あえてレビューさせてもらいます。 なんでもお見通しのすごい美少年だとか、どんなことでも可能にできるほどの財力をもった豪商だとか、とても薄っぺらいです。ジュニア小説っぽい。 昔の宮部さんの作品だと、超能力を持った人物を描いても、記号的にならず、深みがあったのですが・・・。 この作品は、ミステリーとしてもダメで・・・ある人物を殺したのは、ほとんど通りすがりの人です。一応、その前には出てるのですが・・・昔の宮部さんなら、「ああ、この部分で、殺人につながってるのね!」っていうものが書けてるんですが、全然そういうものがないのです。 犯人が、被害者とたまたま話をして、突然昔のトラウマを思い出して、殺しちゃうんですが、犯人にそういうトラウマがあるみたいな情報がその前になにひとつなく(本当にその程度の、通りすがりっぽい人物なんです)、「なんでもお見通し美少年」が勝手に推測して見つけちゃうんですね・・・。がっかりです。 殺人までさせてしまう過去のトラウマ(宮部作品にありがちな家族問題)も、代表作の「模倣犯」の犯人の栗原浩美の生い立ちなら、胸に迫ってくるのですが、この作品ではただのヒステリーにしか思えない。 犯人に自白させた方法も、「こんなんで自白すっかよー」と思いました。 内容的には星ひとつです。 ただ、前作がなくてもひとつの独立した作品として読める(さすがプロ)のと、ところどころ非常に素晴らしい(自分が役立たずなのではないかと悩む少年、悪質な女たらしを逮捕するのに囮を買ってでた少女の心理など)ので、星ふたつ。
映像化、求む!
「ぼんくら」をとても楽しめたので、忙しい年末にも関わらず、この長編に手を付けてしまいました。TV時代劇を一度でも観たことのあるひとなら、なんとなく生活様式を思い浮かべながら、わりとすんなりと読み進むことができると思います。言葉も易しい。人情、なんてもうとっくの昔に置いてけぼりにされた言葉だけど、やっぱりひとを思いやる温かさや、思いやれるひとが近くにいることはいいものだな、と思いました。特に言いたいのは、甘党の方は、甘酒や和菓子を用意して読んだほうがいいということ。食べたくなりますから。
前作『ぼんくら』を読んでから、本書に向かいますよう
 鉄瓶長屋を舞台にした前作『ぼんくら』の事件から一年が経った頃、井筒平四郎と彼を取り巻く人たちの前に、再び新たな事件が持ち上がります。先の「鉄瓶長屋」事件の火種は消えておらず、今回は大火事が起きたとでもいった風に話が繋がっているので、ぜひぜひ、『ぼんくら』を読んだ後に本書に向かうことをおすすめします。  前作同様、この『日暮らし』でも、初めにいくつかエピソード的な話が置かれた後に本編に進むという構成になっています。最初の四つの話に登場する人物と事件が、本編に入って寄り合わされ、織り上げられて行く。登場人物と彼らのエピソード風の話が、一枚の美しい衣装の中に織り込まれて行くんですね。特に、本編の後半から終盤へと話が進むに従って、「ここにあの時の話が繋がってくるのか」「ここであの場面が生きてくるのか」と、何度も膝を叩きたくなりました。  井筒平四郎に弓之助、おでこ、お徳。彼らを始め、登場人物のキャラクターが実に生き生きと描き出されていて、自然、親しみを覚えました。彼らに注がれる作者の眼差しがあたたかく、そして厳しくもあったところ。そこにも共感させられました。とりわけ、登場人物それぞれの胸の奥に潜み、彼らを苦しめる“心のざわめき”を描写する件りでは、読んでいるこちらの胸の中もざわざわと騒いだり、ぐっと胸を衝かれたりしました。  話のラストでは、「ああ、あともうちょっとで終わっちまう」ともったいない気がして、ゆっくり、味わうように読んでいきましたねぇ。そして最後の頁を閉じて、「ああ、いいものを読んだなあ」と、胸の中がほこほこあたたかくなったのでした。 ※2004年12月30日付 単行本に寄せたレビューより転載

理由 (新潮文庫)

[ 文庫 ]
理由 (新潮文庫)

・宮部 みゆき
【新潮社】
発売日: 2004-06-29
参考価格: 900 円(税込)
販売価格: 900 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
理由 (新潮文庫)
宮部 みゆき
カスタマー平均評価:  4
ページが進むごとに暴かれていく謎
一家四人が高級マンションで殺された事件をドキュメンタリータッチで浮き彫りにする物語。 インタビュー形式で関係者たちが事件を振り返り真相を突き詰めていく手法。
私的に宮部作品の最高峰
直木賞受賞作ということですが、レビューを見ていると結構好みが分かれる本作。 宮部氏の作品は最近ファンタジーものや時代ものが多いですが、 個人的には火車や模倣犯のような本格的なミステリーが好きです。 ミステリーといっても活劇的な部分は皆無だし、ストーリーも 説明的なところが多いのが本作の特徴。 レビューでも一部の人が指摘しているように展開が遅いというのは一理あります。 しかし私は逆にそれこそがこの作品の真骨頂ではないかと思います。 一人一人の登場人物に事件そのものに大きく関わってない部分も含め、 かなり詳細に説明してるのが一部の方には退屈なのだと思います。 そのような一見無意味な細かい設定の連続性が登場人物に存在感をあたえ、 この作品にリアリティーを生み出しているのではないかと思います。 この作品は事件の表面からスタートし、その全容を関わる人物のエピソードから 少しずつ解明していきます。 私たちが普段ニュースで知る事件はその被害者や加害者のほんの一部しか知ることができません。 この本を読んだあと、普段その一面だけを見て理解したつもりになっている世の中の 事件にはきっと多くのストーリーを含んでいるのだろうなと思いました。 関係ないですが私はこの作品を荒川の自宅マンション(15階)で読みました。 読んでいる最中何気なく窓の外を見てしまいましたw
「事件」には報道されていない理由があります。
私達は日常、新聞報道などで様々な事件に遭遇していますが、その「事件」というものが辿る不思議な世界を斬新な手法で描き出した小説だという感想を持ちました。ここに取り上げられる事件は、一家四人殺人事件ですが、その事件には膨大な人間が関ってきます。目撃者、証言者、関係者などそれぞれが一部分を担っていますが、バラバラに存在している情報はそれぞれが孤立しており、事実と思い込みや空想との距離が測れません。一枚一枚のカードを丁寧に並べなおしてゆくことで、事件は素顔を覗かせ始めます。普通の人が突然事件に巻き込まれてしまう日常に潜む罠を宮部さんはよく使用しているように思いますが、この作品でも、そのリアリティーが遺憾なく発揮されていると思います。導入部での圧倒的な迫力は凄いです。ぐいぐいと文章に引きずられてゆくような文体が圧巻でした。
家族の、陰の呟きこそがキモ!
超高層マンション内に住まう身元不明の一家四人が、一夜にして殺害された。事件の真相をルポタージュ形式で追う、"真相追求型"のミステリ小説。 すべての証拠は、マンション内に住まう住人たちの中にしか転がっていない。捜査を進める中、マンション内に住まう住人たちの様々な家庭環境が捜査当局に去来する。 それぞれの事情を抱え、互い違いに、"よそ"についての虚像を抱く"家庭"。 どんなに幸せそうな家庭でも、自分の家族に充足し続けられる家族はどこにもいない。誰しもが不満を見つけ、幸せな部分は見えなくなるのだ。いったいどこに隠してしまうのかと思う程に。 読み進めるごとに、事件の経緯以上に、書き込まれた家族群像の方に目を惹かれていく。 そうさせる程、宮部みゆきの描く人間像は、実にリアルで着飾る所がない。彼らは各々の観点から気儘(きまま)に語っている。 よく書いたな、と感心するほど、登場する人物背景も多種多様だ。心に伝わる生々しい感情が描かれる: 子供の社会、主婦の社会。老人を支配し続ける過去、悪妻とその周縁の人々、闇業者とそれに転がされた人々、嫁姑の微妙な関係、家族に見捨てられた女、家族を憎悪する男ーー。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 自分が思うにこの本、一家四人殺しというミステリ的部分は、話を600ページ引っ張るためだけにあるのだと思う。 むしろ、家族がお互いの考えを言いっ放しにしている、この状態をこそ比較して楽しむものなのではないかと思う。 全く関係のなかった多くの家庭も、見方を変えただけでいつ破綻し、いつ殺人が起こるかわからない。些細な契機(きっかけ)を与えるだけで、波紋は大きく拡がっていくーー。 この事に気づくと、すべての家族の物語が連鎖的なものとして立ち上がってくる。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 他の宮部作品に比べ、比較的読み進めるのに時間がかかる作品。じっくりとした文章で、言い換えれば十分な読み応えがある。 過去の作品「火車」に近い部分があるが、自分の口には「理由」の方が合う。 軽い本ではない。そこがお勧めできる所である。
家族という単位からはずれると
直木賞を取ったのが、『火車』でもなく『模倣犯』でもなくこの『理由』だったのが、わかるような、わからないような・・・着眼が素晴らしい、一人一人の心理や状況説明は丁寧、都会の中の寂しさはせまってくる・・・面白かったし、読み応えあった。 ただ、ちょっと真面目に説明しすぎたかな?ところどころ重たいな、というのはありました。 でもやっぱりさすがだな。地味な、まっとうな人間を軽んじないで描く。たまたまでも、むりやりにでも、家族という単位から外れて、まっとうからはずれてしまった人を、悲しみながら書く。そこに優しさをすごく感じるので、いつも読み終えた後いろんなものが残ります。 で、またそれを味わいたくて読むんですよね。

模倣犯1 (新潮文庫)

[ 文庫 ]
模倣犯1 (新潮文庫)

・宮部 みゆき
【新潮社】
発売日: 2005-11-26
参考価格: 820 円(税込)
販売価格: 820 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
模倣犯1 (新潮文庫)
宮部 みゆき
カスタマー平均評価:  4.5
第1巻。被害者の慟哭
本書は、著者の最高傑作とも称される長大なミステリー小説の第1巻(第1部完結)です。 物語の核となる、いびつな犯人の起こした凶悪犯罪を、 不幸にも巻き込まれた被害者遺族の観点から概観し、 第2・3部の基礎となる情報が与えられる1冊ともいえます。 「被害者」としてスポットライトが当てられるのは、 孫娘・古川鞠子の身を案じる実直な豆腐屋店主・有馬義男、 家族を失い、父の友人宅に寄宿する、傷ついた高校生・塚田真一の二人。 二人は現代型とも言える、劇場型の凶悪犯罪に巻き込まれ、 忌まわしい犯人や、一見善意でも、結局他人に過ぎない周囲の人々に、 神経をすり減らされ、翻弄されていく…。 例えば、真一に接するライター・前畑滋子にせよ、 所詮、己の自己実現のために真一を利用しようとする側面は否めないでしょう。 被害者の立場には誰も代わってやれないという、残酷な真実が浮き彫りにされています。 とりわけ、剛毅な有馬義男の過酷な体験は、読んでいて胸が詰まります。 終盤、諦念と我慢を重ねてきた義男の慟哭は、悲しみに満ちていて、読むのが辛かったです。 以前、単行本の上巻で挫折した記憶があるのですが、 「楽園」が本書の続編と知り、また、安価で5巻「大人買い」したのを期に、再読中です。 第2部は、いよいよおぞましい加害者へスポットが…。 どう話が転がるのか、楽しみでもあり怖くもあります。
全巻、読みたくなってしまいました。まだ五分の一なんて。
かなりの長編なので読むのを遠ざけていましたが、思い切って一巻を読んでみました。 これは面白いです。次の頁がめくりたくて仕方なく、残りの頁数がどんどん少なくなっていくのが惜しいと思った本は久し振りです。 濃厚な人間描写と複雑な人間関係は宮部みゆきの真骨頂ですが、それに加えてのサスペンスとしての要素が見事です。たくさんの謎が散りばめられ、それらがどのように収束して結末へ向かっていくのかものすごく気になります。 あと四冊もあるなんて不思議な感じがするのですが、いったい物語はどう展開していくのでしょう?これから二巻を読んでみようと思います。
初宮部作品
原稿用紙3551枚の超大作であるが,スリリングなストーリー展開により,宮部ワールドにすっかり引き込まれ,一気に読破してしまった. 宮部作品は初めてだったが,登場人物の豊かな心理描写,背景の細やかな描写,全編に散りばめられた謎を解く鍵,どれをとっても一流の作家であることが窺える. 本作品を通して,警察の思い込み捜査による冤罪,加害者よりもひどい仕打ちを受けてしまう被害者とその家族,といった現代社会のひずみを痛烈に批判している. ただ,犯人の自白によって,真犯人が判明するという,結末には少し物足りなさを感じてしまった.
教師一家惨殺事件の設定が残念
「教師一家惨殺事件」の設定は「模倣犯」という長編サスペンスに本当に必要だったのか? 長編にするためには必要だったかもしれませんが、どうせ入れるなら、もっと納得のいく設定で書いて欲しかったです。 塚田真一を執拗に追いかける樋口めぐみや、犯人である樋口めぐみの父の動機にリアリティが無さすぎる・・・ きっと最後のほうで本編の事件と密接にからんできて、「教師一家惨殺事件」の設定が重要になってきてくれると・・・わずかな期待をしていたのですが、裏切られました。 模倣犯がもしも連載ではなかったら?「教師一家惨殺事件」のような”おまけの設定”や無駄な登場人物とその背景が省かれて?5星の作品であったと思います。
やっぱり、少し長い・・・その割には・・・
宮部みゆきさんの作品は好きでよく読みますが、長いと感じたのは今回が初めてです。犯罪の残忍さはとても詳細に描写され、ヒロミの内面についてもいやというほど描かれているのですが、ピースの内面について説明不足のまま終わってしまったかな・・・という印象ですね。 長いからというだけでなく、もう一度読みかえしたいとは思わない作品です・・・

楽園〈上〉

[ 単行本 ]
楽園〈上〉

・宮部 みゆき
【文藝春秋】
発売日: 2007-08
参考価格: 1,700 円(税込)
販売価格: 1,700 円(税込)
 Amazonポイント: 17 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 292円〜
楽園〈上〉 ※一部大型商品を除く
宮部 みゆき
カスタマー平均評価:  4
超絶技巧のストーリー展開
著者の作品はこれまで「模倣犯」しか読んだことがないが,その作品の続編ということで読んでみることにした. ストーリーは「模倣犯」の事件から9年が経った設定で,事件で大活躍したが,大きな心の傷を負ったフリーライター・前畑滋子のもとに,荻谷敏子という女性が12歳で事故死した息子に関する不可思議な依頼を持ち込むという内容で始まる.その依頼内容とは,女性の息子が,予知能力を持つ超能力者だったかも知れないので,その真偽を調べて欲しいという突飛なものだった. ストーリー展開は非常に巧妙で,読者を引き込む文章力は,さすがとしか言いようがない.詳細はネタばれのため割愛するが,思いもよらない展開が随所にちりばめられ,読者を飽きさせない流れは素晴らしい.また途中に断章がいくつか挟まれていて,それが後のストーリーに関連するという仕掛けも面白い.
おもしろく、考えさせられました
新刊時に買っておきながら、やっと読みました。今更ながらですが、おもしろく、一気に読まされてしまいました。模倣犯は、そのボリュームと救いようのない陰惨な犯罪描写がえぐ過ぎて、決して読後の感想は良いものではなかったのですが、本作品は、犯罪部分の描写は抑えた印象を受け、個人的にはその点が重過ぎず、丁度良かったかと思っています。その分、土井崎家の親と茜の関係が、自らの家庭の降りかかってきた時に、どのように対処できるだろうか、と言ったところに思いを巡らせてしまいました。親の経済力の格差が子供にも影響を与えてしまう現実、兄弟間の出来不出来、避けられない親との相性等、程度の差はあれど、実生活で抱えてしまう問題が散りばめられており、まだ小さい子供を持つ親として、ミステリーの本質とは違う部分ではありますが、宮部氏の社会問題への問題提起の鋭さに感じ入るとともに、考えさせられるテーマでした。勿論純然とミステリーとしても楽しめました。
遠い世界のはなしではなく
宮部みゆきという作家の書くものは基本的に好きなのだけれど いわゆる大御所、ベストセラー作家というものを、ひねくれて避けてしまうところがあったりします。 でも売れていようが売れていまいがいいものはいいのです。 「模倣犯」の事件から9年、事件の衝撃から立ち直れないままの前畑滋子のもとに舞い込んだ奇妙な依頼。心を動かされた滋子は、新たな事件の渦中に飛び込むことになる―。 既におきている犯罪の理由を追いかけていくことが物語の中心になります。 実の娘を殺し、家の下に埋め、時効成立後に自白をした父と母の、理由。 ひとつひとつ事実がつながっていき、明らかになる真相。 それはどんどん薄暗い道に入り込んでいくような、やりきれない物語です。 いい結末はないと知りながらも、とても途中でやめることはできないのです。 決して許されるようなことではない。 もっと違った方法があっただろうと思いながらも もしあなただったら・・・という問いかけには答えに詰まる。 こうするべき、は答えられるけれど、もし、ほんとうに自分がそこにいたら? あるいは何かを踏み越えて犯罪にいたるまでのひとつひとつの小さな積み重ねを 自分が作り出さないと、いいきれる? ざわざわと、心が落ち着かなくなります。 この作家さんは登場人物をあまりに丹念に書いていくので どの人も、そんなに遠い世界の人々ではない、血の通った隣人のようだから。 でも。 この物語の始まるきっかけになった敏子さんという女性。 この人の存在がお話全体に救いをもたらしています。 救いのない話を、ただ救いのないだけの話としては書かない。 宮部さんらしい優しさもちゃんとありますので、小説として楽しめます。 やっぱり大御所だなあ。上手いです。
残念な作品
「模倣犯」同様、悪人をひたすら悪人として描くことで読者を惹きつけようとする、 救いのない話。主人公についても、非常に独善的な価値観(メディア礼賛に近い) に基づいて描かれている印象で、作者あるいはメディア関係の仕事をされる方でない と感情移入できないのでは?と思わせる。そして、これまた「模倣犯」同様、無駄に長い。 あとがきの言い訳も見苦しく。 個人的には不朽の名作だと思っている「火車」のような作品を、また生み出して欲しい のだが。
約束が反故に
 最近の宮部みゆき氏の作品に不満だったが、この作品には一応満足しました。読んでいて面白かった。  ただし、土井崎が茜を殺害したという前提でストーリーが続くので、これはどんでん返しがあるぞと期待してしまった。結局それはなかった。なんだか宮部氏に約束を反故にされたという気持ちが強い。ラストで読者を驚かせるような大きな展開があれば、ワンランク上の評価になったと思う。

おそろし 三島屋変調百物語事始

[ 単行本 ]
おそろし 三島屋変調百物語事始

・宮部 みゆき
【角川グループパブリッシング】
発売日: 2008-07-30
参考価格: 1,785 円(税込)
販売価格: 1,785 円(税込)
 Amazonポイント: 17 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 600円〜
おそろし 三島屋変調百物語事始 ※一部大型商品を除く
宮部 みゆき
カスタマー平均評価:  3.5
がっかり・・・。
宮部みゆきの作品は、出版されたら読むカンジです。現代版もおもしろいのですが、時代物が好きでした。でも、最近のものはなんだか・・・?ですね。 テンポ良くキレイにまとまっているのですが、話が強引です。 それと、巧みな表現はあいかわらずなのですが、「林立」というの表現が何度か使われていて、宮部みゆきらしくないというか・・・なんというか・・・腑に落ちないかんじです。欲求不満が残る作品です。なんだか、この後も続編が出るような雰囲気でしたが、苦しいですね。一応、出たら読みますけど。
おそろしくない
 宮部さんですから、文章は上手く読ませるのですが、話が怖くないのですね。文章が下手でも怖いほうがいいと思いますよ。残念です。
おもしろいっ
そして、こわいっっ!! タイトルが『おそろし』ですが、ホントに怖かったです。 宮部さんの江戸ものはハズレなしですが、今回は長編なこともあり 少し深いお話です。 宮部さんの怖いは、文章の厚みから滲み出す感じがして・・・ おたかさんの話の当りを油断して寝る前に読んでいたら怖くて怖くて・・・ おちかさんまではいかなくても、こういう後悔とか不満とか天災みないな不幸とか 多かれ少なかれきっと誰にでもあることで、それをどうやって乗り越えて行くか、、、 みたいな事が描かれていて、最後は心が柔らかくなりました。 〆が物語風に終わっていたのが、かわいくて私は好きです。
泣けない…
うーん。この構成だと、最終章では主人公と同調して癒しを体験したい。涙の一つも流したりして。 そういう枠組みの、小説だと思います。 しかし…うーん、泣けなかったですね。私、結構泣き体質で、つまらなくても、白けてても泣き要素入っていればそれだけで泣けるんですが。 個人的には、4話がどうしても作者の意図したような「どんな辛い目に遭った人でもいつかは笑える日が来る」という話として読めなかったのが最大の理由でした。「いや、これで片付けちゃダメだろうこの話」と思っちゃって、そればっかり最後まで気になってしまったので、全然癒しの流れに乗れなかったのです。 1話の方向性でずっと行ってくれたら嬉しかったのですが。 全然関係のないはずの話が、要素でだけつながっている、という形式は好きでした。 読売新聞でやっている続編がより良い形で進んでいってくれることに期待して、☆3つです。
本当にがっかり
宮部みゆきさん、大好きだったんですけど最近のものはあまりおもしろく感じられなくて、離れていました。機会があって久しぶりに手にとってみて「やっぱり・・・」と再びがっかり。 話運びは相変わらずお上手で、ぐいぐい読ませるのですが、ところどころで「え?この人がこんなこと言う?」とか、「その展開には必然性が感じられません!」という気持ちが湧いてきて話に没頭できなくなり、最後のオールスターで「ありえないだろ???!」と机をひっくりかえしたくなりました。 ・登場人物の像が完成されていない ・話が単調(特に殺し方の類似) ・無理やり作者の望む方向に話を持っていき強引に終わらせている 無理にまとめたり解決したりしなくてもいい問題を、解決しようとして間違った答えを出した感が強いです。 杉浦日名子さんの百物語を例にあげてる方がいらっしゃいましたが、同感です。全て説明がつく物事ばかりでこの世が構成されているわけではありません。うらみつらみと関係なく不思議が存在し、理解できないしする必要も無いそれらを蛍光灯でてらして解剖してみたところで無粋なだけです。 宮部さんは昔、本作品では脇役におかれたお吉さん、宗介さんのような人を主役にして珠玉の小品を書かれていたんですけどね・・・救われがたい運命に落ち込んだ市井の人々。改めてかえりみられることのなく、自ら声をあげることもなく静かに世を去っていく人々を。 多分続編ではおちかと清太郎がいい仲になるんでしょうね???全然読みたいとは思いませんが。

孤宿の人 (上) (新人物ノベルス)

[ 新書 ]
孤宿の人 (上) (新人物ノベルス)

・宮部 みゆき
【新人物往来社】
発売日: 2008-05-22
参考価格: 924 円(税込)
販売価格: 924 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
孤宿の人 (上) (新人物ノベルス)
宮部 みゆき
カスタマー平均評価:  3.5
少女の成長物語
前半から中盤にかけてのもったり感は山本周五郎の作品にも共通する「臭いものにはフタ」のようなその時代の(特徴と思われる)ことなかれ主義だと思うとあまり気にはならない。 宮部みゆきは子供、特に少女の成長を描く事に非常に巧みな作家だと思う。 この少女の悲しみに共鳴するところがあるせいかラストの哀切な「ほう」が「おあんさま」に語りかける場面ではやっぱり、わかっていながら作者の術中にはまって泣いてしまう・・しかし、心地よく心洗われる涙なのでよしとします。
強引さが目に付く
テーマは良かったと思うが、消化不足か。特に後半の展開が、話を進めるための強引なものに思えた。あの人たちを物語中で殺す必要があったのか、ラストの少女の反応はあっさりしすぎていないか。
「孤宿の人」期待はずれ
帯紙に「懇親の力をこめて…」とあるが、残念ながら、まったくそうは感じられない。明らかに、少し書いてはまた書きたして、筆を休め、また思いついたら筆で書き続けていく。そんな、ゾンザイさが明らかに漂ってくる。多忙で依頼された原稿が詰まっているのだろうが…このような作者の添削直しが不充分とあられば、先がみえている。残念な失敗作と感じるのは小生だけではないであろう。
「抑揚」がない
私自身、宮部氏の現代小説時代小説を読むのはまだ2作目であるが、正直、作者のファンでなくては、この上下巻あわせて800ページ以上を読破するのは骨が折れると思う。 淡々としながらもハートウォーミングな語り口で作品が進行するのであるが、とにかく、この作品には「抑揚」がない。なにしろ、「孤宿の人」本人が登場するのが、下巻の前半である。そして、作品のテンポがはやまり、面白くなってきたのは下巻の半分過ぎからであった。私自身、作者の作品であるからこそ、「いつか面白くなるはず」と信じて読むことができたが、他の作者の作品だったら、途中で挫折していたと思う。 また、この作品には数人の主要な登場人物が描かれているのだが、結局誰が主人公であるのかがはっきりしなかった。このへんが作品の「抑揚」のなさにつながるのかもしれない。
正しさとは
最近の宮部みゆきの中では、個人的にベストである。 宮部作品は、いつも人の「業」をテーマにしていると感じるのだが、今回はとくに無垢な存在である「ほう」を中心にすえることで、善人(宇佐・井上親子・泉医師・加賀など)である人ですら、みずから「正しい」と感じることを為すことが難しいのだという、人が生きることの苦しさが描かれていた。 これらの人々を取り囲む背景の書き方も見事である。 私にも、丸海藩からのぞむ海が見えるような気がした。

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 更新日 2009年7月12日(日)  ※ 表示価格は更新時のものです!      メール      相互リンク