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[ 単行本 ]
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運命の人(一)
・山崎 豊子
【文藝春秋】
発売日: 2009-04-24
参考価格: 1,600 円(税込)
販売価格: 1,600 円(税込)
Amazonポイント: 16 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,041円〜
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・山崎 豊子
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カスタマー平均評価: 4
力,落ちましたね。 久々の新刊。文芸春秋の連載を読まずに楽しみにしていましたが。。構想力,やはり落ちましたか。『沈まぬ太陽』を読んだ時に,民間会社でそんな不遇に耐えしのばずに退職すればよい,との思いを後半ずっと感じざるをえませんでしたが,今回の『運命の人』,日米間の密約を批判したいのでしょうが,沖縄を返還するためには敗戦国として一定の譲歩は回避できなかったと考えるため,弓成さんは不幸だったかもしれませんが,仰々しく「運命」という言葉の設定と関連づけるのには無理があると感じます。3巻まで読みましたが,4巻目は義務でしかないです。ストーリー展開もいまいち。 取材力の凄さに驚異 これは、沖縄返還に当たって日米で交わされた協定の事実と、その情報が漏えいされた事件を描いたもの。合衆国政府が認めた情報を、なぜ日本は認めないのか。情報を入手した当時の記者は、自らの無実を求めて訴訟中。
山崎豊子さんの本はほとんど読んでいますが、どの作品もその取材力に驚かされます。フィクションとしての面白さは、それに加えて彼女の推察力にあるのかもしれません。外務省機密漏洩事件の概要と、今後の日米関係に疑問を投げかけた作品となっています。
外務省や記者クラブのにおいまで伝わってきそうリアリティ 「不毛地帯」「大地の子」「沈まぬ太陽」など綿密な取材で政治や社会をリアルに描く著者に期待して購入した。今回は政治家と敏腕新聞記者、外務省の官僚たちの汗くさい攻防に魅了される。新聞社政治部記者が紙面を作り上げていくところや官僚組織の意思決定などの描写が特に興味深い。新聞記者の特ダネ至上主義、与野党政治家の国会論戦により物語はどんどんクライシスを迎えていく。民主党の偽メール事件や奈良の捜査資料漏洩事件など、その世界を支配する価値基準を感覚的に得られるだけでもこの小説を読む価値がある。第2巻も引き続きよみたい。 読みながらキャスティングしたくなる本です 久々の超大作に一気に読み終えました!
事実をリアルタイムに知らないのでネットで検索しながらの読書になりました。
山崎さんの作品は「この人は誰のことだろう?」と考えんがら特定していく
のも楽しみの一つです。
きっとこの作品もドラマ化や映画化されるであろうと、ついつい考えてしまい、
読みながらキャスティングしてしまっていました。
流石!大家の腕は凄い! 大家・山崎豊子さんの作品、久しぶりです。
フォントは大きめですが、漢字が多く固めの文章。
政治ものは、あまり得意ではなく、どちらかと言えば苦手分野の私。
う?ん、リタイアか…と思われたのですが、少し読み進めるとグイッと引き込まれました。
流石です。
沖縄返還、当時、小学生だった私、世の中が大騒ぎになっていたくらいの記憶しかありません。
裏にこんな密約があったとは、知りませんでした。
新聞記者と官僚には、こんな付き合い方や取材方法があることも全く知りませんでした。
今はこんな取材できないのでしょうね。
弓成の自信家な性格、新聞屋(ブンヤ)ではなく新聞記者であるという己の仕事への誇り。
弓成にどんどん引き付けられていきました。
スクープ合戦の中、正義感から、極秘文章を若手野党議員に渡してしまった弓成。
それが原因となり、足元をすくわれることになる。
弓成が逮捕されるシーンで、1巻は終わります。
続きが気になり一気に2巻へ!
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[ 単行本 ]
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運命の人(二)
・山崎 豊子
【文藝春秋】
発売日: 2009-04-24
参考価格: 1,600 円(税込)
販売価格: 1,600 円(税込)
Amazonポイント: 16 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,049円〜
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・山崎 豊子
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カスタマー平均評価: 4
引き込まれ、1・2巻一気読みです。 沖縄返還の裏にあった密約を暴こうとした弓成。
国は認めるわけにはいかない。
機密漏洩の罪に問われた事務官・三木。
弓成は、性的関係を迫り、三木をそそのかしたのが罪状。
国家機密を守るため、セックススキャンダルに切り替えられていく。
誇り高い弓成がプライドを傷つけられ、己を失っていく様が描かれる。
2巻では、証拠隠滅を図ってまで夫を支えようとした妻・由美子についても描かれる。
夫の不倫を知るが、夫と子供を守るため、一人頑張る由美子。
しかし夫は、由美子のことまで気遣っている余裕がなかった。
離婚まで考える二人。
同性としては、由美子の強さを感じましたが、同時に彼女の悲しみもひしひしと伝わってきました。
ペンは権力の前に折れるのか…。
裁判の行方が気になります。
3巻の発売を待てず、西山事件について調べてみました。
う?ん、やっぱりそうだったんですね。
これを山崎さんがどう描かれるか、3、4巻とも早く読みたいです!
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[ 単行本 ]
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運命の人(四)
・山崎 豊子
【文藝春秋】
発売日: 2009-06-25
参考価格: 1,600 円(税込)
販売価格: 1,600 円(税込)
Amazonポイント: 16 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,100円〜
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・山崎 豊子
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カスタマー平均評価: 4.5
1?3巻と盛り上がってきただけに・・ 4巻目は少し期待はずれでした。
沖縄戦の悲惨さの記述に前半が割かれていますが、これなどは別に本著以外にも既にいろいろと語られている通りで目新しさはありません。また、本を読まなくとも沖縄の旧戦地(ひめゆりの塔とか)に行ったことある人なら悲惨な歴史に接している筈です。
弓成記者の裁判で存在が問題になった、米国と日本政府の密約公文書が見つかった場面の記述も特に感動的というわけではありませんでした。
(密約が事実であったとして、弓成記者は冤罪被害者というわけではないでしょうし。)
ただ、弓成記者は霞ヶ関や永田町に出入りしてひたすらスクープと出世(将来毎朝新聞の社長候補と言われた)を追い求める謂わばエセジャーナリストから、最高裁判決後の失意と挫折感にさいなまれるなか、南国の島への逃亡と隠遁、沖縄での人々との交流を通じて、本当の意味でのジャーナリストに変わって行ったのではないか。
新聞記者はもちろん、世のジャーナリストといわれる人に自問自答してほしいテーマでもある。一流といわれる新聞社は発行部数を伸ばして利益を上げるのが使命ではないはずなのだから。
作者の伝えたかったことはそこではなかったかと思う。 「運命の人」の圧巻 2009年で一番の本になりそうです。
沖縄戦の悲惨さについては、少しは知っていたつもりでしたが、本書では涙なしには読めませんでした。沖縄本島の住民の3分の1が死亡した事実。集団自決の状況。泣き声が洩れるため絞殺される幼児。沖縄方言が通じず日本兵にスパイ容疑で射殺される者。
第2次世界大戦のきっかけについて触れませんが、戦争中の日本の本土、また戦後の日本の発展は、少なからず沖縄の犠牲の上に成り立ってきたことは事実でしょう。
戦争中は本土決戦を遅らせるための場となりました。戦後は、日本の安全保障のためとは言いながら、日本人・沖縄県民をなめきったような米軍の傲慢さ・横柄さに耐えしのんできました。米兵は婦女暴行を繰り返し、中には小学生も被害者になってきました。
現在の日本は、米国をはじめとした海外を相手とする貿易立国であり、米国を無視しては、国民は食べてはいけないとは思います。しかし、この沖縄の状況を知るほど、現在の日本人の米国に対する考え方や接し方が、表面的でかつ経済的な利益のみに偏っている気がしてなりません。
最後に、主人公の弓成に目を向ければ、奥さんと再開する場面も感動的です。世間からのバッシングにも関わらず、一人の人を信じ続けた奇跡を感じました。
第4巻を読まずして「運命の人」を語るなかれ ようやく発売された4巻を読み終え、感無量です。寝食を忘れ、これほど読書に没頭したのは何年ぶりでしょうか。非常に難しい問題を、わかりやすく小説にし、読者をぐいぐい引き込んでいく山崎豊子さんの作家としての力量は、やはりすごいです。
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[ 単行本 ]
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運命の人(三)
・山崎 豊子
【文藝春秋】
発売日: 2009-05-28
参考価格: 1,600 円(税込)
販売価格: 1,600 円(税込)
Amazonポイント: 16 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 989円〜
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・山崎 豊子
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カスタマー平均評価: 4.5
4巻の発売が待ち遠しい 澤地久枝の『密約』を読むと、実名がすべてわかります。
弓成記者が極秘文書を渡した議員は、あまりにも軽率だったと思います。でも、まだ議員やってるんですね。
そそのかされたのは、日本国民。今も昔も権力の構図は変わっていません。いや、弓成さんのような記者はもういないから、今の方がひどい。アメリカでは当時の文書が公開されているのに、麻生首相「密約はなかった」だって。
あー、早く4巻が読みたい! 啓示 山崎氏の作品は、いずれも小説の域を超え、実話に基づいた社会問題、国家や大企業の欺瞞を緻密な取材と筆力で暴く壮大なストーリーで常に我々に何かを啓示している気がする。氏の書かれる題材・スケールにはその都度圧倒され、私たちの気付かぬ、また立ち入る事の出来ない分野に、作家という腕力を持って敢然と立ち向かい挑戦し続けている。この小説にも年齢を重ねても衰えることのない信念と情熱を感じる。沈まぬ太陽が日航であったのと同様、運命の人は憲法21条言論・出版の自由という基本的人権と国家権力を問う壮大な物語だ。正義を貫こうとした主人公弓成は国家権力に捻り潰される正に運命の人である。しかし弓成は潰されるだけでなく、自らが犠牲になることで言論の自由・メディアのあり方を訴え続けるという近代史にも類稀な運命を背負って生きることになるのだ。誰のための国家機密か。誰のための政府か。報道機関の意義とは何かを山崎氏は問い質したかったのではないだろうか。氏がいなくなれば誰が筆力を持って現代社会の歪を正すのか不安さえ感じる。時の総理大臣佐橋は在職中の痕跡として、なんとしても沖縄返還という金字塔を成し遂げたかった。己の名誉のためには国民のことすら一顧だにせず密約を交わす。その命を受けた外務大臣は米国の理不尽な要求を呑み、外務省幹部も皆ひた隠す。警察庁・最高裁をもコントロールする国家権力、検察の驕り。この問題がこのまま過去の出来事と葬り去られていいのだろうか。記者生命を賭して報じた沖縄返還の裏・外務省極秘電信分。権力は国家の犯罪すら巧妙に下世話な『情通』に掏り変え、世論をコントロールし、弓成一家の運命をも歪める。国民を欺くために秘匿した国家機密。それ自体が最大の犯罪ではないのか。最高裁にも控訴棄却されたこの問題を、氏は小説を通じ世論に問いかけているのではないか。この小説で最高裁の判決が果たしてすべて正しいのだろうかとも思える。憲法21条をもう一度問い質す作品だ。政府は国民のためにある。政府の欺瞞を暴く事は報道機関の役割ではないのか。ストーリーよりもこの作品には、いまだ『密約はなかった』と嘯く政治家・国家権力を正す一石をなることを期待したい。メディアの役割。主人公弓成の運命の真の意義を現実のものにして欲しい。 裁判をめぐっての記述がすごい 関係者への取材や裁判記録を元に小説風に仕立てているんだろうけれども、登場人物とくに被告の女性事務官や弓成の妻の心情の描き方は、女性作家だからでしょうか、さすがです。
『そそのかし』の解釈をめぐって法廷で争われますが、個人的には、地裁の判決が弓成側(弁護団)に流されすぎであって、高裁判決&最高裁判断は妥当だと思います。
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[ 文庫 ]
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沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)
・山崎 豊子
【新潮社】
発売日: 2001-11
参考価格: 620 円(税込)
販売価格: 620 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・山崎 豊子
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カスタマー平均評価: 4
完全なフィクションだったら,5つ星の大作 一個人の感想ではあるが,面白いと思いながらも強い拒否反応を起こしてしまった。
ノンフィクションの内容をフィクションにすることにより,
事実以上に脚色を加えた恣意的な部分を感じたからである。
これならば,完全なノンフィクションとして読みたかった。
事実を元に表現するという観点からは,あまり好きになれない作品であるが,
完全なフィクションだったら,間違いなく5つ星の大作である。
映画化が楽しみ! 「沈まぬ太陽」読み終えました。
みなさんが書かれているように、官僚主義、出世主義、エリートの自分勝手なやり方 色々と我々庶民からは想像できないようなストーリーの展開です。
安全こそが第一の航空会社としては、恐ろしいほどの利益至上主義、全体をコントロールしきれない大企業病が書かれています。
本当にこんな会社、組織が航空会社を運営しているならば、本当に恐ろしい。
誇張している部分はあるのでしょうが、御巣鷹山の事故の前後はある程度本当の話なのではないでしょうか?
(組合もいくつも分かれ、労使関係も悪いというのは既知に事実ですしね。)
(内容もとてもリアリティーに富んでおり、作者の気合が行間に滲みでているし。。。)
私はよくこの航空会社の飛行機に乗ります。
今はこんな組織状態でないことを信じています。
航空会社殿には、この小説に反論/反駁するのではなく、我々客側が「この小説は嘘だ/間違っている/そんな事はないだろ」 と感じられるような 会社になってほしいと思いました。
この小説が映画化されるとのことですね。渡辺謙が主演とのことですね。
楽しみにしています。
航空会社への嫌がらせというような映画ではなく、よりよい組織、会社になることを警鐘する映画にしてもらうことを期待しています。
小説がとても面白いので、映画も小説に負けないような出来であるように期待しています。
情念と情景と・・・。 実際に目の前にしているかのようなアフリカの自然と会社の理不尽な仕打ちに慟哭する主人公恩地の情念の描写が絡み合いながら、それこそ息もつかせぬテンポで進むストーリー。
この分量を忘れさせるほどにぐいぐい引き込まれ、「アフリカ編」一気に読みました。
「アフリカ編」の最後は意外とあっけなく・・・な感じでしたが、読み応え有るビジネス小説です! 元・駐在員家族として…。 本作は、全5冊からなる「沈まぬ太陽」の第1部(上下巻)であり、
筋を曲げない硬骨漢の恩地元が、会社組織の中で味わう10年にわたる苦難を描きつつも、
全体の中では、第3巻・御巣鷹山篇の前フリの役割を担っているともいえます。
国民航空社のエリート・恩地が、労組委員長の職責を全うし、従業員の待遇、
すなわち空の安全を軽視する経営側に対し、正義感から激しい権利擁護活動をする。
これら本書の労組・不当労働行為を巡る部分は、労働法の勉強の教材になりそうです。
しかし、その報復人事として、パキスタン・カラチ支店への異動を命じられ…。
物語は、現赴任地ケニア・ナイロビでの野生的かつ空虚な生活が描かれつつ、
臥薪嘗胆の日々が回想されていく…。玉にキズなのは、回想がかなり長く、
やや間延びした構成とも取れる点でしょうか。
本書は、個人の尊厳に対する組織の過酷な仕打ちが克明に描かれており、
大多数の従業員の冷たい視線や理不尽な言動に、宮仕えの悲哀を感じさせます。
もっとも、本編で十分に描かれた国民航空の陰惨な実態が、第3巻、
御巣鷹山の悲劇の前提条件を形成していくという主張が、言外に込められています。
また、個人的に感銘を受けたのが、海外駐在の苦労や、
恩地の家族(妻と兄妹)の心情がリアルに描かれていることです。
私事ですが、私も幼時にのべ11年、アジアの3都市で父親の駐在に付き合いました。
幸い報復人事ではなかったよう(笑)ですが、母と私、妹(恩地家と同一の構成)は、
度重なる引越しや転校が嫌で、私などは情けなくも毎度メソメソしていました。
思うに、本書に表れた、発展途上国での生活の実態、それに対する家族の感情はリアルです。
同時に、おそらく屈託なく仕事をしていたように見えた父も、
少なからず異文化との接触、狭い社内での軋轢に耐えていたのではと推測します。
そういう意味で、本書と第2巻は、私にとってかけがえのない書物です。
そして、現在僻地で頑張る駐在員の方は、ぜひ、お子様に本書を差し上げて下さい。
私は約20年前に本書に出会いたかったです。 これから、すぐに(2)を読み始めます 筆者も心待ちにしていた映画化が実現するとのニュース。
筆者も心待ちにする、これまで映像化が何度も流れてきた、
そんな紆余曲折を耳にし、これは面白いに違いない!と同書を手にしました。
面白いです、実に面白いです。
登場人物も一人一人が丁寧に
描かれており、一気に読みきってしまいました。
これから、(2)をすぐに読み始めます。
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[ 文庫 ]
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不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))
・山崎 豊子
【新潮社】
発売日: 2009-03
参考価格: 860 円(税込)
販売価格: 860 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 580円〜
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・山崎 豊子
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カスタマー平均評価: 5
行間を読むことの大切さを教えてくれる傑作、 山崎豊子の豪快な作風が遺憾なく発揮された傑作、初期作品の情緒を愛するものには違う人が書いているのかと思わせるほどだが、本作のような題材を一気に読ませる作品に仕上げる娯楽作家の本領が発揮されています、いかんせん長編に免疫のない人には驚愕の大長編小説です、似た題材を描いた石川達三「金環食」や松本清張でウォーミング・アップしてもいいかもしれません、
私のような昭和の歴史好き読者の意見として次の点だけは多くの読者に知っておいてほしいと思います、
よく知られるように主人公壱岐正のモデルは戦前は大本営参謀として陸軍の作戦立案をおこない、戦後は伊藤忠商事で活躍した瀬島龍三(故人)です、これはあくまでもモデルであり本作は瀬島個人の人生のセミ・ドキュメンタリではありません、著者の調査による多くのデータから登場人物それぞれが再構成されたことだけは肝に銘じた上で読んでほしいとおもうのです、
本書では昭和20年8月15日の阿南陸軍大臣の自決後(映画「日本の一番ながい日」参照)に主人公が満州へ向かいますが、瀬島隆三が関東軍参謀の辞令を受け取り羽田を飛び立ったのは昭和20年7月10日(自伝「幾山河」による)、8月8日夜半ソ連軍が満州に進攻したあとに日本人居留民を守るという当然の義務を関東軍が放棄したまま終戦を向かえた結果、満州でどれほどの悪行をソ連軍がおこなったかは多くの記録が物語るとおりです、その責任の一端は大日本帝国陸軍中佐であり在満州・関東軍参謀瀬島龍三にあるのです、
8月15日の終戦後でさえソ連軍が軍事侵攻したと判断した千島・樺太の大日本帝国陸軍守備隊は果敢に戦いました、最近ではそれなりに有名になった占守島の戦闘では守備隊の適切な判断で島民は無事に北海道に帰還できたのです(中公文庫「最後の日ソ戦」参照)、
もし日本人が昭和20年の満州を描くのであれば関東軍軍人たちの武人としての誇りのなさを大きな声で描写すべきなのだ、という視点からは本作はやはり物足りないでしょう、
瀬島の自伝を読めば明らかですが瀬島は軍人ではあるがたった一度の戦闘も経験していない優秀な軍事事務官と評すべき人物(本書の壱岐正も同様な人物として描写されています)で、硫黄島で有名な栗林中将のような「軍人」と同類などと勘違いしてはいけません、 彼のようにまったく戦闘経験のない「幹部軍人」が大日本帝国陸海軍にはいて捨てるほど実在した事実(有名な山本五十六も同類)は、逮捕経験のない警察幹部・消火活動を経験していない消防幹部のような正体不明の印象を現在の私たちに与えます、
瀬島がほんとうにシベリアで苦労したのか? 昭和19年瀬島はソ連になぜ一人で出向きいったい何をしてきたのか? そして瀬島ほど華麗な軍歴を誇る人物が何ゆえに創業期の自衛隊に入隊しなかったのか(瀬島の胡散臭い背景に気付いた自衛隊側の拒否なのではないか、自伝でもこの経過は実にあいまいに記述されている、瀬島龍三=ソ連スパイ説からアメリカから自衛隊に圧力があったと指摘もする人もいる)? など瀬島龍三に関する疑問はつきない(旧ソ連の情報公開を待つ)というのが現実です、
瀬島の自伝で最も奇怪な部分が昭和19年に自らの目で極東ソ連軍の増強を確認しながらも大本営参謀として何一つ対策しないままに満州赴任に至る経過をまるで他人事であるかのように冷ややかに記述している箇所(つまり客観かつ冷静を装って何事かを隠蔽していること)で、以上の事実を知った上で読む本書の面白さは娯楽を超えたものだと保証します、
それにしても、壱岐正、つまり「意気正し」とはいつもながらの著者得意の安直な命名が面白く、21世紀の現在では不毛地帯とは戦争もしていないのに惨めに自滅してしまったソ連という情けない共産党政権国だったのだとも気付かされます、
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[ 文庫 ]
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女の勲章 (上巻) (新潮文庫 (や-5-38))
・山崎 豊子
【新潮社】
発売日: 2005-12
参考価格: 660 円(税込)
販売価格: 660 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 100円〜
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・山崎 豊子
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カスタマー平均評価: 4.5
ヒロインの背中をどつきたくなる本 不毛地帯、華麗なる一族、女系家族と、最初読んだ不毛地帯の迫力に圧倒されて、山崎豊子さんの作品を読みました。私にはこの女の勲章が4作目にあたりますが、この作者の設定、筋立てのうまさはどれも素晴らしいと思いますが、どうもそれに比して人物描写のシンプルさは、読んでいて気になります。
ヒロインの船場の元御嬢さん、苦労知らずとはいえ、こんなに単純に人に繰られていく、ということがあるんでしょうか。不審を感じても、信じたい男を信じ続ける。それが恋の悲しさ、とはいえ、読みながら背中をどつきたくなりました。そのうえ善人(お人よし?)ヒロインを取り巻く人物が、揃いも揃って一癖も二癖もあるワルばかり、とは。もう少し人物設定、人物描写に変化と深みを与えれば 「なんでやねん。なんで気づかへん。」と、ヒロインの単純さに突っ込みをいれながら読むこともなかったのに。 女の勲章とは何なのか・・ これいいですよ。
女性が読むにせよ、男性が読むにせよ。
話の展開、登場人物、舞台、心理描写、背景描写、どれをとっても個人的に
十分楽しめた作品でした。
氏の作品はどの作品も読みやすく、かつスリリングな気分を味わえることで
私は大好きなのですが、いつも終盤にあたって話の展開が急すぎるところや、
「事前に気づけただろ」みたいな部分があるところを少し残念に思っていました。
ところが今作は終始話のペースを乱さず、非常に丁寧に書かれていたように思います。
あとがきで新聞連載の小説だということを知り、なるほどなぁと思いました。
「女性」というものを知ることにおいて今回、非常に勉強になった気がします。
また、こんな世知辛い時代だからこそ、こういう小説は読まれるべきだと思いました。
「女性の品○」もいいと思いますが、定義から入るよりも具体例を感じたほうが
身に染みる部分はあるのではないでしょうか。
時代ついでに余談ですが、こんな世の中で生きていくことを考えるにあたって
個人的に氏の作品でお勧めなのが、
・女性が読むなら今作、「女の勲章」
・男性が読むなら「ぼんち」
を挙げておきたいと思います。
読み出したら止まらない! 船場の両家の嬢(いと)はんである式子は生家を叔父に譲渡し
、それで得た資金で洋裁学校を開校した。商家の息子で一流大学を出、
有名商社に勤めていた銀八郎は、商社をやめ、
敷式子の学校にフランス語講師として勤め始めたが、
いつの間にか理事長のようなポストにつく。
また式子の助手には弟子の倫子、富枝などがついており、
華々しく日本の服飾業界に躍り出た。
銀八郎は洋裁学校の経理面や利益面などに腕を振るう一方で、
式子とも関係を持ち、なにやら学校をのっとりそうな勢いである。
また式子には秘密で、弟子である倫子たちとも関係を持ち、彼の考えはいったい何なのか?
とにかく先が読めないので、ついつい先を急いでしまいます。
この銀八郎の思惑も気になりますが、お嬢様育ちの式子が徐々に貫禄を見せてくるところが読みどころでもあります。
女たちの世界も十分楽しめます。
現実的 山崎豊子さんを愛読しているといつも現実的な場面(人間の嫌な部分)にぶち当たり
こういうものなんだろうと納得しながら読ませていただいております。
これも、華やかな舞台裏の壮絶な人間模様が。。
ちょっと悲しい結末ですが
後味の悪さはありません。。天罰はいつか下ると信じてますから。
山崎豊子さんの相変わらずの取材力には感服いたします。
下巻の後半はドキドキしながら、あっという間に読み終えました。
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[ 文庫 ]
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二つの祖国〈上〉 (新潮文庫)
・山崎 豊子
【新潮社】
発売日: 1986-11
参考価格: 780 円(税込)
販売価格: 780 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・山崎 豊子
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カスタマー平均評価: 5
筆の乱れない著者を尊敬 それまでの自分の歴史観を揺さぶられた。というよりも、太平洋戦争をめぐるあの時代のことを改めて知らされた。
右翼も左翼もなく、真実を知るためには、もっと多くの資料に当たらなくてはならないし、ここで語られる史実を鵜呑みにすることはできない(著者も「史実に基づいたフィクション」であるとことわっている)が、一人の日本人として読んでおきたい秀作だと思う。
上・中・下の3巻にわたる壮大な物語は、実に多くのことを私に教えてくれた。これだけの作品を3年にもわたって綴りながら筆が乱れない著者を尊敬する。
とにかく面白い 評論ぽいことは書けないけど、面白いことは間違いないです。
上中下でだいぶ長編だけど、気にならないくらい一気に読めます。
今まで読んだ本の中で一番印象に残ってるかも。
文句なしに星5つ、おすすめです。 本当の敗戦とは!東京裁判の真実 日系2世であるための苦悩と、アメリカ本国における日系人の差別を描いた前半と東京裁判を描く後半。
私はこの作品を読んでいる間中、怒りで震え、表では友人ぶっているあの大国の本当の姿が見えた気がしました。
戦勝国と言うだけで、敗戦国の権利や真実にふたをして、弁護人不在の裁判をし、戦争犯罪人という前代未聞の名前を作り、命を奪ってゆく・・・
きっと、この作品を読んでいられない方は、私を右翼だと思われるかもしれません。
しかしながら、この作品を読んだ方なら、私の言い方が決して過激でないことをわかっていただけると確信しています。
靖国問題、対米問題、国防問題いま、話題になっている国防や戦争責任など、この作品で理解できると断言します。
今の外交をみて、敗戦国だから・・と納得してしまうような内容です。
この傑作小説を映画化して下さる事を、邦画関係者に強くх10望みます 本書は小説であり勿論「フィクション」でしょうが、下巻の巻末にもあるようにこの物語の主人公のモデルとなる日系2世の人物が実在していた事が明かされています。・・・確かに私達は学校の授業で日系2世の在米アメリカ人が大戦中に強制収容所に収監されていたなんて事は全く知らされていません。(同じアメリカの敵国であるドイツ人やイタリア人はそんな事はなかったというのに!)
やはりアメリカという国は「自由」と「平等」を建て前上は掲げていても、実際は「有色人種」に対する抜きがたい「差別意識」が厳然とあるという事が解ります。・・・後、心に残っている部分としては広島に対する「原爆投下」の事でしょうか?被爆直後の広島に大勢の日本人の医者が現地に乗り込み「被爆者」の手当てを望んでいたのに、何とアメリカはそれを拒否!何より先に原爆開発に関わった「科学者」や「軍関係者」を優先して現地入りさせた!・・・・・
つまりあくまで世界史上初の「放射能汚染者」としての実験データとしてしか「被爆者」を見ていなかったのだ!・・・・(哀しいかなこれが現実である)
この小説のあるシーンで第三者が主人公にこう語りかける部分がある。「これから君はアメリカの正体を嫌でも見ることになるだろう・・・」これは著者がまるで私達に直接語りかけてくる様な感じがして私は・・・背筋に悪寒を感じた事を憶えている・・・・・ 国を愛する 2つの祖国を愛すれば愛する程、苦悩する・・・。
これこそが「国を愛するということ」なのではないかと、考えさせられました。
国家による強制ではなく、環境から自然に身に付いていくもの、気がつかないうちに身に付いているものなんだと。
ただ、この本は、本当に苦しい です。
実際の日系の方々の苦しみは、到底、我々には想像できないと思います。
このようなことがあったということを知ったのは、自分にとっての財産です。
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[ 文庫 ]
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沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)
・山崎 豊子
【新潮社】
発売日: 2001-11
参考価格: 700 円(税込)
販売価格: 700 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 52円〜
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・山崎 豊子
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カスタマー平均評価: 4.5
沈まぬ太陽2 アフリカ編(下) 主人公に対する、執拗な会社側の理不尽な報復。これに対して、自分を信じる仲間のためにも信念を曲げず、私腹を肥やす会社側に与しない姿が感動的です。実際には、主人公のようにされることはないと思いますが、少しでも報復人事等を経験した人は勿論、そうでない人も共感できると思います。また利益一辺倒の昨今、品質安全問題にも視野に入れたこのシリーズは、時代背景にかかわらず感慨深いものがあります。 会社の非情さが赤裸々に書かれる パキスタン、イラン、ケニアと、恩地の海外たらい回しの旅は続く。
組合の副委員長として共に闘った同期の行天は会社側に寝返り
順調に出世を重ねていく。
そんな中、1972年に国民航空の旅客機がニューデリー、ボンベイ、
モスクワと連続して事故を起こす。事故調査班として現地に派遣
された国民航空社員の苦闘が書かれる。
しかし、事故原因をパイロットのミスとする社員の考えは無視され、
会社には空港設備の不備であるとの報告が出される。また、事故
原因調査に同行したパイロットが、同じパイロット仲間を擁護する
ため、自分の目で見た事実を信じず、執拗に仮定の想像を繰り返し、
空港設備に責任を求める姿にはあきれてしまった。
このような体質が、日本航空(作中では国民航空)123便墜落事故
に繋がって行ったのではないだろうか。
やがて、恩地に日本帰国の話が出てくる。しかし、それは会社側が
折れた訳では無く、連続事故の背景に国民航空の労使関係が影響
しているのではないかと国会で追及されたからであった。会社として
は、更なる僻地へ追いやる計画もあったようだ。
家族との別れ、出世を重ねるかつての仲間、海外で一人仕事をする
孤独、日本で会社に差別されながらも頑張っている組合の仲間、様々
な思いが積み重なり、恩地は精神的に追い込まれていく。
執拗な報復人事、組合つぶし、安全軽視の体質など、会社の非情
さが赤裸々に書かれるアフリカ篇。
そして物語は運命の御巣鷹山篇へと続く。 続きが楽しみ 合員の待遇改善を目的に組合活動を活発に行ったことからアフリカに10年以上飛ばされていた主人公の恩地が組合員の働きかけでようやく帰国できるようになった。
アフリカ編(下)は読中爽快であったがその後はどうなるのか…楽しみである。
この面白さは最後まで挫折がないことは間違いない。
よかったが 色々な登場人物が出てきたが行天と主人公の対比
がよかった。
行天も主人公から見るとうまくやっている奴のようではあるが
彼には彼なりの信念があるのだと思う.
失礼ながらアフリカに左遷というのがどうも自分から見ると
それほどつらいことには思えなかった。 愛読書 実際、一度友人に借りて感動し、
どうしても自分の本棚に仕舞っておきたくなった書籍です。
全5巻を2回通り読んだことになります。
5巻で一つの物語である為、
各巻ごとの評価、というものは出来ません。
ノンフィクションであることで疑いなく沁み込んでくる内容。
疑いはないが信じられない現実が1ページごとに紐解かれていきます。
傑作です。
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[ 文庫 ]
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大地の子〈1〉 (文春文庫)
・山崎 豊子
【文藝春秋】
発売日: 1994-01
参考価格: 610 円(税込)
販売価格: 610 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・山崎 豊子
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カスタマー平均評価: 5
涙なくしては読めません 波瀾万丈の壮大なストーリーが予想通りに展開して、まるで漫画みたいだと思いながらも随所で思わず涙してしました。現実味が希薄ですが、娯楽読物として面白かったです。
満蒙開拓団、文化大革命、残留孤児の問題を身近に届けた功績は大きいと思います。 残留孤児とは 今更ですが、読んでみました。
非常に読み応えのある硬派な内容で、引き込まれて一気に
読んでしまいました。
残留孤児の主人公に幾多も襲いかかる不幸、主人公を助けた
養父母の人間性、貧困が故にエゴむき出しの貧農、現代中国
の象徴である狡猾な政治家、妥協を許さない厳しいビジネス
の内幕。
どのシチュエーションにおいても綿密な取材と膨大な資料に
よる裏付けによりリアリティーと迫力があった。
中でも共に孤児となりながら自分とは異なる悲惨な運命を
生きてきた実妹。偶然にもその妹と再会することとなり、実妹
の不幸な最後の場面で実父とも運命的な再会を果たす。
立場は異なるが、日中の巨大なプロジェクトで共に働く実の親子
の再会をどの様に描くのか、揺れ動く主人公の心情を思いながら
読み進んでいったが、なんとも皮肉な悲しい再会として描かれて
いた。
戦争によって肉親との辛い別れと異国で過酷な人生を歩まざるを
得なかった残留孤児の物語であるが、厳しい幼少時期から文革と
いう暗黒の時代を経て、ようやく掴み取った中国人としての尊厳
(?)である党員となった主人公は、最後に中国人=大地の子と
して生きていくことを告げた主人公とその言葉を聞いた実の父親
の心情を考えると複雑な気持ちになった。
人権なき世界と人間の狂気が結びついたときの恐怖 結論は納得である。やはり所変われど、「氏より育ち」である。
その意味で、「大地の子」という表現は、簡にして明瞭なメッセージである。
こう考えると、果たして、残留孤児として日本に帰国した人は、果たして幸せに生きているのだろうかと素直に疑問に思う。
しかし、最近の小説がぺらぺら薄っぺらいものに感じてしまうほど骨太の作品である。
無知で恥ずかしいが、自分の生まれた直後の時期に文化大革命が起こり、狂乱の時代が中国大陸に到来していたとは知らなかった。
また、小日本鬼子(シアオリーベンクイツ)という日本人の血を引くものへの侮蔑の言葉が耳について離れない。
普通の日本人で、文化大革命時代の中国で、自分は無傷に立ち回れると思える人はいるまい。
正直、自分の立ち居振る舞いによっては死を招きかねない時代の暗さは目を覆うばかりである(戦前の日本もこういう感じだったのだろうか)。
読んでも読んでも、ソ連軍の虐殺、妹との別れ、労改送りと、これでもかとつらい話が続き、これでハッピーエンドか期待をしても、それは空しく裏切られる。
しかし、こういう重厚な本が、安価な文庫で読めるのは至上の喜びとすべきであろう。
全体の展開を時系列で見ると、1)敗戦時の死線を彷徨う日々、2)陸徳志と暮らした日々、3)北京鋼鉄公司での活躍と暗転(労改送り)、4)上海宝華製鉄建設での活躍と暗転(大包鋼鉄公司への転属)、5)名誉回復とエンディングということになるのだろうか。
やはり、こうした果てしなくて出口のない物語で最後救われるのは、「私は、この大地の子です」という陸一心の言葉であろう。
なお、なぜこのような本の執筆が可能になったかは巻末(胡耀邦党総書記の知遇を得たこと)に示される。 日本政府のいい加減な政策に翻弄される子供たちの苦難 10年ほど前、中国残留日本人孤児の帰国問題が話題になっていた。まったく、事情を知らなかった私はなんでいまごろ日本に帰りたいのだろうと無責任に感じていた。そのころTVドラマ「大地の子」にであった。日本の移住政策、戦後の動乱に翻弄され、異国に取り残された戦争遺児たち。その苦難の人生を丹念な取材と緻密な文章で綴られていく。陸一心は教師である養父にひろわれ、教育を受け、差別を受けながらも、中国なかで出世するが、妹は奴隷のようにあつかわれ、一心と再会するやいなや死んでしまう。ほとんどの孤児はこのようにしてなくなっていったのだろう。長い苦難の人生を生き、帰国を願う孤児を暖かく迎える気持ちが日本には見られなかった。まさに棄民。日本政府のいい加減な政策で、人生を翻弄された人々は、北朝鮮帰国事業、拉致問題、南米移民など多数いる。また、現代でも医療問題、介護問題、教育制度など、朝令暮改の政策で弱者を苦しめている。 山崎豊子小説のうち最高の作品の一つ 中国残留孤児を描いた当作品は当時の悲惨な状況やその中で逞しく育っていく少年の姿に惹き込まれる。
読み進めると中国の文革がいかに近代化を遅らせたものであるかが理解できるほか、中国人の国民性がよく分かる。
中国はその是非はともかく、日本のような和を持って尊しとするような文化ではなく、やや利己主義が強い国民性であると感じた。現状の中国をみても当時のこうした様子が再現されている気がしてならない。
ある意味で日本よりも資本主義が徹底している不思議な国である現代の中国を理解するにも当作品は非常に参考となるであろう。
ボリュームのある作品であるが一読の価値あり。
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