カスタマー平均評価: 5
ガイドブックと言うよりエッセイ集かな? ここに収められているアーティストのアルバムをほぼリアルタイムで聴いてきた著者のこの本は、1970年代生まれの自分にとって、とても参考になるものでした。身近にブラックミュージックのうんちくを教えてくれる良き(?)先輩を得たようなものです。
前置きがあまりにも長いので、「早く本題に!」と思うこともありますが、これはこれで面白い。およそ本題とは関係のない個人的なエピソードに、読んでいて思わず笑ってしまうこともしばしば。むしろ前置きを読みたいがために、興味のないアーティストのページを読んでしまったりもします(笑)。この本は、ガイドブックと言うより、エッセイ集みたいなものですね。
自分が好きなアレサ・フランクリンやルビー・ジョンソン、ヴァンデラス、ミリー・ジャクソン、キャンディ・ステイトンらの記述がなくてちょっと残念でしたが、ブラックミュージック全般のことを理解するのにとても助けになりました。もちろんただの暇つぶしにも使えます。
著者はヒップホップにもかなり通じていて、ブラック・ムーンのエピソードなど、ヒップホップファンであれば、さらに楽しめると思います。次回はヒップホップ編を期待しています。 自分語りの音楽ガイド 読みながら『ザ・コミットメンツ』の中の「アイリッシュは、ヨ ーロッパの黒人なんだから」という(ような趣旨)のセリフを思い 出した。なんで白人がR&Bを演奏するんだ、という問いに対して の答えである。 この本には筆者の個人的なエピソードがたくさん出てくる。そん なのガイドには直接、必要ないわけだが。でもそれこそが、なぜこの曲を、このアーティストを推薦するのかという理由に厚みを加え ている。「何年に発売」「チャート何位」「ブラックミュージック 史の中での位置づけ」……そんなデータの羅列じゃ、マニアならざ る人の心は動かないわけですよ。自分の来歴を語り、それとブラッ クミュージックとの関連を語る。筆者がその時いだいた感覚に読む 側が共感を抱いたとき、初めてリアリティをもってブラックミュー ジックが響いてくる、という仕掛け。 そもそもブラックミュージックに対してはアウトサイダーに過ぎ ない日本人が大半なわけで、ガイドブックにリアリティをもたせる ためには自分語りをせざろうえなかった、と勝手に思い込んでます。 あ、でもデータも充実です。 印南印 R&Bディスク・ガイド『Juicy』シリーズでおなじみ、印南敦史のR&B本。単なるガイドブックではもうあきたらないと、フェイヴァリットR&Bディスク/アーティストをイントロデュースしながら、「自身の半生を回顧する」的な一冊。ゆえに、彼の生き方に共鳴している人には読み応えのある内容かも。80〜90年代については『Juicy』で紹介し尽くしたか、ディスク・ガイドは60〜70年代R&B中心。 彼がスタイリスティックスに初めて会ったときのエピソード、ほほえましいですね。 こんな気楽な、でも熱い音楽本。最高でした!! 一瞬、その分厚さに躊躇したのもつかの間。 うんちくが書いてあると見せかけるタイトルとは裏腹に、 実は紹介アーティストにまつわる著者のエッセイがちりばめられた 力の抜けたレビューで、 ぐいぐい読めてお勉強もできるステキな本でした。 著者の音楽愛を最も感じたのは、うんちく本にありがちな絶版CDを紹介するなどということなく、思い立ったらすぐ手に入れられるような現行ライン満載のご紹介。 「まずベストを買ってみるのも…」なんてレビュー、優しいじゃないですか!! 良い音楽を多くの人へ、という心意気のつまった一冊だと思います。 超・大満足!! 読み物としてもガイドとしても良い、音楽好き向け図書 ブラックミュージック(以下「BM」)って、好きが昂じると、だんだんワイン通的な世界にはまりがちな気がする。「何年にリリースしたアルバムの録音からバックバンドに誰々が加入して、それからリズムがこう変わった。」とか。そういった情報は、それはそれで興味深いんだけど。 かといって、一応BM好きとしては、「そんなの知ってるよ!」という初期情報だけが詰まっている本は買う気がしない。その点、この本は、過去に聞いた曲の多寡に拘わらず、「読書」の範疇でも楽しい本。著者は、あとがきでも「ガイドブック(以下「GB」)は書く気がしないがGBの有用性は否定しない」旨記しているが、まさにその言葉どおりの本だと思う。GBとしては、データもさることながら音の風景や味が伝わってくるのがイイ。塩分何%と言われても料理の味は伝わらない。音楽もそう。加えて、著者の人柄なども伝わってくる。多分、著者は、フロアでOHIO PLAYERSのFunky Warmがかかっても、DURAN2のThe Reflexがかかっても踊(れ)る人だと思う。
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